天気図に2つの台風が並んでいるとき、「藤原の効果が起こる可能性がある」という言葉を目にすることがあります。
名前だけではどんな現象なのか想像しにくいですが、簡単にいえば、近くにある複数の台風がお互いの進路に影響を与える現象です。ただし、台風が2つ接近すれば必ず起こるわけではなく、「台風が合体する現象」という意味でもありません。
この記事では、藤原の効果の仕組みや台風の動き、過去の事例、迷走台風との関係についてまとめます。
気象庁では「藤原の効果」について、2つ以上の台風が接近して存在する場合に、互いの進路に影響を及ぼし、相対的に低気圧性の回転運動をするなど特徴的な動きをする現象としています。
イメージとしては、2つの台風がお互いに引っ張り合うようにして進路を変える現象です。
名前は、1921年にこの相互作用について研究を発表した日本の気象学者・藤原咲平に由来します。
藤原の効果が起こると、2つの台風が同じ場所を中心に回るように動くほか、一方がもう一方を追いかけたり、接近したり、逆に離れていったりすることがあります。
必ず同じ動きになるわけではないため、台風の進路が複雑になる要因の一つでもあります。
台風同士がどのくらい近づくと起こる?
藤原の効果は、一般に台風同士の距離が800~1,000km程度になると現れることがあるとされています。ただし、「1,000km以内に入れば必ず起こる」という明確な境界があるわけではありません。
気象庁の気象衛星センターが紹介している2002年の事例では、台風9号と11号が約1,590km離れた段階から相互作用が現れ始めたと分析されています。台風の大きさや強さ、周囲の風などによって状況は変わるため、距離だけで藤原の効果が起きるかどうかを判断することはできません。
藤原の効果が見られた過去の事例
気象庁の気象衛星センターでは、2002年の台風9号と台風11号について、藤原の効果が現れた事例を紹介しています。
このときは台風11号がほとんど停滞する一方で、台風9号がその周囲を回り込むような進路をとりました。資料では、2つの台風が約1,590km離れていたころから相互作用が始まり、その後さらに距離を縮めたと分析されています。
また、国立情報学研究所の「デジタル台風」では、
- 2013年の台風27号・28号
- 2012年の台風14号・15号
- 2011年の台風15号・16号
など、複数の台風が接近して存在した過去の例を紹介しています。
ただし、ここには注意が必要です。複数の台風が接近して複雑な動きをしたからといって、すべてを藤原の効果によるものと断定できるわけではありません。
台風は、ほかの台風だけでなく高気圧や偏西風、気圧の谷などからも影響を受けているためです。
藤原の効果と迷走台風は同じ?
藤原の効果と「迷走台風」は同じものではありません。
迷走台風と呼ばれる台風は、周囲の風が弱かったり、高気圧や偏西風の位置が変化したりすることでも複雑な進路をとります。つまり、藤原の効果は台風の進路が複雑になる原因の一つにすぎません。
近くに別の台風が存在しなくても、1つの台風だけで進路が大きく変化したり、長期間停滞したりすることがあります。そのため、「迷走している台風=藤原の効果が起きている」と考えないようにしましょう。
なぜ気象庁は「藤原の効果」を解説に使わない?
実は気象庁では、「藤原の効果」を解説用語として使用していません。
台風はほかの台風だけでなく、高気圧や偏西風、気圧の谷などさまざまな影響を受けています。そのため、実際に複雑な進路をとった台風について、どこまでが別の台風との相互作用によるものなのかを明確に示すことが難しいためです。
ニュースなどで「藤原の効果」という言葉を見かけても、それだけで今後の進路を判断するのではなく、気象庁から発表される最新の台風情報を確認することが大切です。
まとめ
藤原の効果とは、近くに存在する複数の台風が互いの進路に影響を与え、特徴的な動きをする現象です。
2つの台風が回り込むように動いたり、接近・離反したりすることがありますが、台風が接近すれば必ず起こるわけではありません。また、藤原の効果と迷走台風は同じ意味ではなく、複雑な進路を生み出す要因の一つと考えるのが適切です。
複数の台風が同時に発生しているときほど、予想進路は変化する可能性があります。数日前に見た予報だけで判断せず、最新の台風情報を確認しましょう。
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