大雨や洪水への備えというと、「川から離れているから大丈夫」「マンションの上層階だから浸水の心配はない」「自宅は浸水想定区域ではないから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。
しかし、大雨で影響を受けるのは自宅の建物だけではありません。電線や水道施設、道路などが被害を受ければ、家そのものが無事でも停電や断水が起こり、普段通りの生活ができなくなる可能性があります。
災害が起きてから「あれを用意しておけばよかった」と思っても、外出できるとは限りません。この記事では、大雨・洪水によって実際にどんな困りごとが起こり得るのかを確認したうえで、まず3日間を乗り切るために最低限備えておきたいものを紹介します。
- 大雨・洪水では、自宅が浸水していなくても停電・断水・道路寸断などで生活に支障が出ることがある
- 内閣府は、食料や飲料水などを最低3日分、できれば1週間分備えるよう案内している
- まずは最低ラインとして、水・携帯トイレ・ライト・モバイルバッテリー・非常食の5つを備えておきたい
- 必要量は家族構成や住環境によって異なるため、この記事では3日分を基準に考え方を紹介
- 災害が起きてからでは準備できないこともあるため、平時に少しずつ備えておくことが大切
大雨・洪水では「家が無事でも」生活が止まることがある
大雨による被害というと、河川の氾濫や住宅への浸水をイメージしがちです。しかし、実際には自宅が直接被災していなくても、周辺のインフラが被害を受けることで生活に大きな影響が出ることがあります。
大雨でなぜ停電する?復旧まで数日かかることも
大雨のときに停電が起こる原因は、雷だけではありません。
強風で飛ばされた物が電線を傷つけたり、大雨によって土砂崩れが発生し、電柱や電線が損傷したりすることで停電することがあります。東京電力パワーグリッドも、風雨・台風による停電原因としてこうしたケースを挙げています。
停電すると、照明だけでなく、
- 冷蔵庫・冷凍庫
- エアコンや扇風機
- 電子レンジなどの調理家電
- スマートフォンの充電
- Wi-Fiルーター
なども使用できなくなります。特に夏場の停電では、エアコンが使えなくなることも大きな問題です。また、「停電しても数時間で復旧する」とは限りません。
2024年7月25日から秋田県・山形県を中心に発生した大雨では、落雷や土砂崩れなどによって、山形県内を中心に延べ約4万3,000戸が停電しました。倒木や土砂崩れによって道路が寸断され、復旧作業員が現場に入ること自体が難しくなった地域もあり、すべての停電が復旧したのは8月1日でした。
電気設備だけでなく、そこへ向かう道路まで被害を受ければ、復旧には時間がかかります。
大雨でなぜ断水する?水道管や設備が被害を受けることも
断水も地震だけで起こるものではありません。
大雨や洪水によって、
- 河川の増水で水道管や水管橋が損傷する
- 土砂崩れによって水道管が破損する
- 水源が土砂などで埋まる
- 水をくみ上げるポンプ設備が冠水する
といった被害が起こることがあります。
2024年7月25日からの秋田県・山形県の大雨では、最大2,805戸で断水が発生しました。
原因も一つではなく、河川氾濫や土砂崩れによる水道管の破損、水管橋の損傷、水源地のポンプ設備の冠水などさまざまです。多くの地域では数日で復旧した一方、国土交通省が8月7日時点でまとめた資料では、一部地域で8月下旬から月末まで復旧に時間を要する見通しとなっていました。
断水すると困るのは、飲み水だけではありません。トイレを流す、歯を磨く、顔や手を洗う、料理をするなど、普段の生活では想像以上に多くの場面で水を使っています。
道路が冠水・寸断すると「買いに行く」こともできない
自宅に水や食料がなければ、「必要になったらコンビニやスーパーへ買いに行けばいい」と考えてしまいがちです。
しかし、大雨の最中はその考え方自体が危険です。
道路が冠水していたり、河川が氾濫していたりする状況では、不要不急の外出を避けなければなりません。土砂崩れや道路崩落によって、地域が孤立するケースもあります。2024年7月の大雨でも、山形県内では道路被害による孤立が発生しています。
つまり、「水がなくなったから買いに行く」「電池が切れたから買いに行く」という普段なら簡単な行動が、災害時にはできなくなる可能性があります。
スマホの充電切れは情報収集にも影響する
災害時にはスマートフォンが非常に重要です。気象情報や避難情報を確認するほか、自治体からのお知らせを確認したり、家族と連絡を取ったりするためにも使用します。
停電すれば自宅で簡単に充電できなくなるうえ、Wi-Fiルーターも電源がなければ使えません。普段以上にスマホを確認する状況だからこそ、電池残量を確保することも防災の一つと考えておきたいところです。
災害が起きてから準備するのでは遅い
大雨による停電や断水は、必ず起こるものではありません。
しかし、いざ起きてから、「懐中電灯がどこにあるか分からない」「モバイルバッテリーが充電されていない」「飲料水がほとんど残っていない」「断水したけれど携帯トイレがない」と気付いても、すぐに買いに行けるとは限りません。
大雨が激しくなってから外出すること自体が、新たな危険につながる可能性もあります。だからこそ、災害が起きてからではなく、何も起きていないときに最低限の準備をしておくことが重要です。
すべての防災用品を一度にそろえる必要はありません。まずは、「電気・水道が止まり、買い物にも行けない状態でも、数日間生活できるか」という視点で自宅の備えを確認してみましょう。
大雨・洪水への備えは「まず3日分」を目安に
内閣府では、食料や飲料水などについて最低3日分、できれば1週間分の備蓄を推奨しています。飲料水は1人1日3Lが目安です。
もちろん、余裕があれば備蓄量を増やしておくに越したことはありません。ただ、「1週間分を一度にそろえるのは大変」と感じて何も準備しないのでは本末転倒です。
まずは最低ラインとなる3日分。ここだけは確保しておきましょう。この記事では、その3日間を乗り切るために最低限用意しておきたいものを紹介します。
| 備えておきたいもの | 1人・3日分の目安 | 2人の場合 | 4人の場合 |
|---|---|---|---|
| 飲料水 | 9L | 18L | 36L |
| 食料 | 約9食 | 約18食 | 約36食 |
| 携帯トイレ | 約15回分 | 約30回分 | 約60回分 |
| ライト・ランタン | 自宅で必要な数 | 家の広さ・人数に応じる | 家の広さ・人数に応じる |
| モバイルバッテリー | スマホ台数・使用量に応じる | スマホ台数・使用量に応じる | スマホ台数・使用量に応じる |
携帯トイレについては、成人の平均的なトイレ使用回数を1日5回程度として計算しています。
もちろん必要な量は、家族構成や住環境によって異なります。まずは3日間を一つの基準にして、「自分の家庭なら何がどのくらい必要か」を考えてみてください。
大雨・洪水に備えて最低限用意しておきたい5つ
ここからは、数ある防災用品の中でも、停電・断水・外出困難になった場合を考えて、最低限用意しておきたいものに絞って紹介します。
1.飲料水|1人3日分で9Lを目安に
断水したとき、最優先で確保したいのが水です。
内閣府では、飲料水として1人1日3Lを目安としているため、3日分なら1人9L。2人なら18L、4人家族なら36Lが目安になります。普段飲んでいる水を少し多めに買って入れ替えていく方法でも構いませんが、長期間保管したい場合は保存水も選択肢になります。
おすすめ①
アイリスオーヤマ 保存水 2L×6本|手頃な価格で備えたい人に
5年間保存できる、アイリスオーヤマの長期保存水です。
防災用として十分な保存期間がありながら、比較的手頃な価格で購入しやすいのが特徴。まずは最低限の飲料水を備えておきたい人にも選びやすい商品です。費用を抑えながら、定期的に入れ替えて備蓄したい人におすすめです。
予算の目安:1,500円前後(6本) ※2026年8月時点
おすすめ②
アコール 10年保存水 1.8L×6本|買い替えの手間を減らしたい人に
アコールの保存水は、10年間の長期保存ができるのが大きな特徴です。
5年保存水より価格はやや高くなりますが、交換する頻度を減らせるため、「防災用品は一度そろえたら、できるだけ長く保管しておきたい」という人に向いています。保存期間を重視して、管理の手間を少なくしたい人におすすめです。
予算の目安:2,700円前後(6本) ※2026年8月時点
2.携帯トイレ|1人3日分で15回程度
意外と忘れやすいのが、断水時のトイレ対策です。水洗トイレが使えなくなると、普段通りに排泄物を処理できなくなる可能性があります。
経済産業省では、成人の平均的な排泄回数を1人1日5回程度として災害用トイレの備蓄を呼びかけています。3日分なら1人15回、2人なら30回、4人なら60回程度が一つの目安です。
携帯トイレは場所もそれほど取らないため、水や食料と合わせて事前に用意しておきたい防災用品です。
おすすめ①
BOS 非常用トイレセット 50回分|臭い対策まで重視したい人に
凝固剤・汚物袋に加えて、使用後の汚物袋を1回分ずつ入れられる防臭袋(BOS素材)が50枚付属する非常用トイレセットです。便器カバーも2枚入っており、自宅の洋式トイレにかぶせて使用できます。交換目安は15年です。
災害時は、ごみ収集がすぐに再開するとは限りません。使用済みの携帯トイレを自宅で一時保管する可能性まで考えると、排泄後の臭いをできるだけ抑えたい人に向いている商品です。
予算の目安:5,000円前後(50回分) ※2026年8月時点
おすすめ②
アイリスオーヤマ 非常用トイレセット 50回分|価格を抑えて備えたい人に
アイリスオーヤマの50回分セットは、凝固剤50個・汚物袋55枚・防臭袋12枚が入った非常用トイレです。凝固剤には抗菌剤が使われており、消臭・抗菌機能も備えています。こちらも未使用・未開封で15年間保存可能です。
BOSのように1回ごとに防臭袋へ入れる構成ではありませんが、必要な機能を備えながら価格を抑えやすいのがメリット。まず非常用トイレを手頃に備えておきたい人に選びやすい商品です。
予算の目安:3,000円前後(50回分) ※2026年8月時点
3.LEDランタン・ライト|停電した夜に備える
停電が昼間に起こるとは限りません。夜になれば、家の中を移動するだけでも明かりが必要になります。
スマートフォンのライトでも一時的には代用できますが、スマホは情報収集や連絡手段として電池を残しておきたいところです。部屋を広く照らせるLEDランタンと、必要な場所を照らせるライトがあると便利です。
おすすめ②
GENTOS EX-334D|停電時にしっかり明るさを確保したい人に
最大440ルーメンの明るさを備えた乾電池式LEDランタンです。普段の天井照明と同じ明るさにはなりませんが、停電した室内で周囲を確認したり、食事や身の回りの作業をしたりするための明かりとして使いやすい光量です。
単3形アルカリ乾電池4本で、白色の最大440ルーメンなら約8時間、昼白色240ルーメンなら約17時間、暖色170ルーメンなら約23時間点灯します。弱モードなら約78〜100時間まで伸ばせるため、状況に応じて明るさを落とせば電池を長持ちさせることもできます。
3色の切り替えと無段階調光に対応し、IP64の防塵・防滴仕様。明るさと電池持ちを使い分けながら、停電時の主な照明として備えたい人におすすめです。
予算の目安:3,000円前後 ※2026年8月時点
おすすめ②
Panasonic BF-AL06N-W|長時間使える明かりを備えたい人に
最大約110ルーメンとGENTOSより明るさは控えめですが、少ない電池で長時間使えることが特徴です。単3形乾電池3本で使用でき、付属のエボルタNEOなら最大110ルーメンの全灯時でも約17時間、55ルーメンの白色または電球色なら約33時間点灯します。
110ルーメンは部屋全体を普段通り明るくする光量ではありませんが、停電時に足元や周囲を確認したり、テーブル周辺を照らしたりする用途には使いやすい明るさです。さらに6段階で明るさを調整でき、最小まで落とせば非常に長時間使用できます。
明るさの強さよりも、電池交換の回数を抑えながら長時間明かりを確保したい人におすすめです。
予算の目安:3,000円前後 ※2026年8月時点
4.モバイルバッテリー|スマホの電源を確保する
停電時に重要になるのが、スマートフォンの充電です。気象情報や避難情報、家族との連絡など、災害時ほどスマートフォンを使用する機会は増えます。
必要な容量は、使用しているスマートフォンの台数やバッテリー容量によって異なります。普段使っているモバイルバッテリーでも構いませんが、災害時に使えるよう本体が充電されているか定期的に確認しておくことも大切です。
おすすめ①
エレコム EC-C07BK|価格を抑えて20,000mAhを備えたい人に
20,000mAhの大容量で、3,000mAhのスマートフォンなら約3.9回充電できるモバイルバッテリーです。USB-CとUSB-Aを1ポートずつ備え、合計最大20Wの出力に対応しています。
防災用としては、スマートフォンを数回充電できる容量を確保しつつ、価格を抑えやすいのが魅力。「災害用に1台備えておきたいけれど、高機能モデルまでは必要ない」という人に選びやすい商品です。
予算の目安:4,000円前後 ※2026年8月時点
おすすめ②
Anker Power Bank(20000mAh, 30W)|普段使いも兼ねて使いやすさを重視したい人に
20,000mAhの大容量で、iPhone 15なら約4回、Galaxy S24なら3回以上充電できるモバイルバッテリーです。USB-C×2、USB-A×1の3ポートを備え、1台使用時は最大30Wの急速充電に対応しています。
付属のUSB-Cケーブルはストラップに収納して本体へ取り付けられるため、災害時に「バッテリーはあるのにケーブルが見つからない」という事態を防ぎやすいのも便利なポイントです。また、バッテリー本体も最大30Wで充電できるので、使った後の再充電も比較的スムーズです。
エレコムより価格は上がりますが、充電速度・ポート数・ケーブルの携帯性まで含めて、日常でも使いやすいものを選びたい人におすすめです。
予算の目安:7,000円前後 ※2026年8月時点
モバイルバッテリーは購入後に何年も放置するのではなく、数か月に一度を目安に残量を確認し、必要に応じて充電しておくと安心です。
5.非常食|調理できなくても食べられるものを
停電や断水、道路の冠水などによって買い物に行けなくなれば、自宅にある食料だけで過ごすことになります。
3日分を基準にするなら、1人あたり約9食が一つの目安です。ただし、すべてを「防災専用の非常食」でそろえる必要はありません。
缶詰やレトルト食品など普段から食べている保存性の高い食品を少し多めに置き、食べた分だけ買い足していくローリングストックも有効です。内閣府もこの方法を紹介しています。
災害発生直後を考えると、電気や加熱器具がなくても食べられる食品をいくつか用意しておくと安心です。
おすすめ①
尾西食品 アルファ米12種類セット|主食をしっかり備えたい人に
非常食の主食として定番なのが、尾西食品のアルファ米です。お湯だけでなく水でも戻せるため、停電でお湯を沸かせない状況でも食べられます。製造日から5年6か月保存でき、12種類の味が入っているので、数日間でも同じ味が続きにくいのがメリットです。
「まず主食をまとめて備えておきたい」という人には、使いやすいセットです。
予算の目安:5,000円前後(12種セット) ※2026年8月時点
おすすめ②
備蓄deボローニャ 6缶セット|水も調理も使わず、すぐ食べたいときに
缶を開ければそのまま食べられる長期保存のパンです。プレーン・メープル・ライ麦オレンジの3種類×2缶が入っており、製造日から5年6か月保存できます。
アルファ米のように水を使う必要がないため、断水時でも備蓄している水を消費せずに食べられるのが大きなメリット。停電直後や避難前など、調理する余裕がないときにすぐ食べられる食品も用意しておきたい人におすすめです。
予算の目安:3,500円前後(6缶セット) ※2026年8月時点
おすすめ③
カゴメ 野菜の保存食セット YH-30|災害時の野菜不足も考えて備えたい人に
非常食はご飯やパンなどの主食に偏りやすいため、野菜系の保存食も組み合わせておきたいところです。
YH-30には、「野菜一日これ一本 長期保存用」6缶と、トマト・かぼちゃ・豆の野菜スープ各2袋が入っています。野菜飲料は30品目の野菜を使用し、スープは野菜・豆・穀類を使った内容になっています。
どちらも常温でそのまま口にできるため、停電や断水時にも使いやすいのが特徴。主食だけでなく、食事のバランスも少し意識して備えておきたい人におすすめです。
予算の目安:3,500円前後(6缶+2種 各2袋セット) ※2026年8月時点
家族によって必要なものは変わる
ここまで紹介した5つは、多くの家庭で共通して必要になる可能性が高いものです。ただし、必要な備えは家族によって異なります。
例えば、
- 毎日服用している薬
- 乳幼児用のミルクや離乳食
- 紙おむつ
- 生理用品
- アレルギーに対応した食品
- 高齢者向けの食品や衛生用品
- ペットフードやペット用品
などは、必要になってから代用品を探すことが難しい場合があります。
内閣府も、乳児用ミルクやおむつ、アレルギー対応食品など、家族の事情に合わせた備蓄を呼びかけています。「一般的な防災グッズがそろっているから大丈夫」ではなく、自分や家族にとって欠かせないものは何かも一度確認しておきましょう。
まとめ
大雨や洪水によって、自宅が必ず浸水するわけではありません。
それでも、周辺の電線や水道設備、道路などが被害を受ければ、家そのものが無事でも生活に影響する可能性があります。実際に過去の豪雨では、停電や断水が数日以上続いた地域もありました。
災害が迫ってから慌ててすべてを買いそろえる必要がないよう、まずは、水・携帯トイレ・明かり・スマホの電源・食料の5つについて、自宅に3日分の備えがあるか確認してみてください。
全部を完璧にそろえる必要はありません。不足しているものがあれば、できるところから一つずつ準備しておくことが、大雨・洪水への備えの第一歩です。
日常の道しるべノート 